横浜市青葉区大人のピアノ教室 あおばピアノの部屋ブログ

無音を表現する

今日は久しぶりに、真面目な音楽のお話しを~。

先日、今まで何十年も
何の疑問ももたず見てきた楽譜の表記について
質問されて説明できずに困った……という経験をしました。

それは、シューベルトのソナタをレッスンしているときのこと。

「この休符の小節の1って、どうして書いてあるんですか?
必要ないんじゃないですか?」という質問。

休符

確かに!
「1」とわざわざ書かなくても、
小節に全休符だけが書かれていれば、拍子関係なく
その小節は丸々一小節休むという意味になりますし
このような場合、「1」と書かない方が一般的です。

ちなみに、このシューベルトのソナタは
原典版と他の複数の出版社もチェックしましたが
すべて同じように「1」が記されていました。

結局、適切な説明が思い浮かばず
「宿題にさせてください。友人にも聞いてみます。」と言って
答えを保留にさせてもらいました。

その晩、ZOOMでピアニストの友人数名と集まり
この表記について話し合いました。

最初のリアクションは皆、私と同じで
「そう言われればそうねー。
どうしてわざわざ書いてあるのかしら?」というもの。

理論上は必要ないのに記された「1」の謎!?

とりあえず、「1」を消して見比べてみましょう。

休符

休符

こうして見ると、
「1」と記されていることによって
休符の存在感が増すというか
「しっかり1小節分の休符を感じて!」と強調されているような
特別な意味をもった小節のような印象を受けませんか?

残念ながら、私が調べた限りでは
この表記に関して、はっきりした回答のようなものは
見つけることができませんでしたが
いろいろ調べていくなかで
休符は単に「休み」という意味だけでなく
「無」や「死」という意味で用いる表現法が
バロック時代からあったということ。

そして、シューベルトも多くの作品のなかで
特徴的な休符の使い方をしていることから
おそらく、このソナタの場合も
しっかりと1小節のあいだ、緊張感を緩めず
無音を感じて欲しいというこだわりが
「1」の表記につながったのでは???
という意見でまとまりました。

音楽のなかの音の鳴っていない瞬間は、
音以上に演奏効果をもつことがある!

演奏しているときはどうしても
音を鳴らすことに意識がいってしまい
休符を見るとつい”お休み”と思って気も緩みがちですが
音符を弾くのと同じように
休符も感じて表現するという意識をもつと
楽譜の読み方が少し変わってくるかもしれません。