横浜市青葉区大人のピアノ教室 あおばピアノの部屋ブログ

「老後とピアノ」

今日から5月!
3年ぶりのコロナによる行動制限のない大型連休ということで
テレビでは賑わいを取り戻しつつある観光地の様子がみられますが
教室メンバーは「特別な予定なし」というかたが多いようです。

私も、いつもより少しだけのんびり読書する時間がもてるぐらいで
あとは衣替えや、日頃さぼっている掃除、
来月に控えたコンサートの準備などで
連休はあっという間に終わってしまいそうです。

読書といえば、先日とても興味深い本を読みました!
教室メンバーから紹介して頂いた
『老後とピアノ』(ポプラ社)という本です。

老後とピアノ

著者は朝日新聞社の論説・編集委員をされていた稲垣えみ子さん。
50歳で退社後、その文才を活かし、
人生後半戦を朗らかに生きるためのノウハウを
さまざまな角度からアプローチして文章にされています。

『老後とピアノ』は、その稲垣さんが40年ぶりに再開した
ピアノの奮闘記ともいえる内容で
大人になってからピアノを再開した誰もが経験する壁について分析し、
それをどう乗り越えていくかを徹底的に考え、
自ら実践していく様子が記されています。

大人のピアノ教室を運営している私にとっては、
どれも「あるある」でうなづけることばかりなのですが、
ピアノと奮闘する稲垣さんの心の声そのままを表現した文体が
あまりに正直で、実感がこもっていて、
読んでいて何度も声を出して笑ってしまいました。
(注:決して嘲笑ではありません!)

そうなんです……、大人から始める(再開する)ピアノは
思っているほど楽ではありません。
努力すれば努力しただけ弾けるようになるかと言えば、
その度合いは、本人が期待しているより遥かに小さいかもしれません。
でも、努力は必ず報われます!

努力の成果が感じられるまで
コツコツと地道な練習を続けられるか、
ピアノに対してそれだけの情熱をもっているか、が
ピアノを一生の趣味として続けられるかどうかの分かれ道です。

でもこの本、ただのピアノ奮闘記で終わっていません。
読後に心に残るのは
『他人の評価は、どうでもいい。
ただ”今”を楽しんで生きる。』というメッセージ。

これはピアノに限らず、
年齢を重ねていくうえで
誰もが共感できる考え方ではないでしょうか。

さてこの本、
「あ~、ここ、教室のみんなにぜひ読んでもらいたいー!」と
思うところが満載なのですが、
そのなかでも一番読んでもらいたい箇所を引用させていただきます。

それは、稲垣さんが初めて発表会にチャレンジする章の
キョーフに震える心を必死に落ち着けて練ったという戦略のくだり。

『老後とピアノ』稲垣えみ子:著 より抜粋

緊張しない方法として「とにかく練習」と言う人がいるが、それだけではダメなのだ。だって私、これまでだってずっと「とにかく練習」してきた。これ以上の練習は人生に差し支えるというギリギリのところまで練習してきたと言ってもいい。それで、ダメだったんである。先生のレッスンですらその成果を情けないほど発揮できなかった。ならば、私に残されたのは「量」ではなく「質」の見直しである。いつもと違うことをするべきなのである。

(中略)

早速、ずっとぐずぐず後回しにしてきた練習を書き出してみる。
①片手練習
②運指を適当にやらない
③ゆっくり練習
④徹底して力まない練習

(中略)

こうして改めて振り返ってみれば、成果が出ないのは単に練習のやり方がダメだったからなんじゃ?面倒臭い練習はことごとくスルーしている私は結局、子供時代から全く進歩していない。なのに、ただ時間を費やして「こんなに練習している私ってエライ」などと言っているから根本的な成長がないのである。ってことで、面倒臭い練習、しましたとも!

(中略)

はっきり言いましょう。進歩したのだ。
今更こんなこと言ってナンだが、先生のご助言は全くただしかったのである。どれもこれもやるべきことであった。

我が「あおば♪ピアノの部屋」のメンバーも、
①の片手練習と②の運指を適当にやらない、は
ほとんどのかたが心がけてくださっているのですが、
③のゆっくり練習は苦手、そして
④の徹底して力まない練習は、
レベル関係なく全員にとって永遠の課題ですね。
でもこれは、音楽的な美しい演奏をするためには
絶対に必要なとても大切なことなのです!

「力まない」とは、無駄な力を使わないということ。
技術的に難しいところで力が入ってしまうのはまだ仕方ないとしても、
力まなくて弾けるところでも力んでしまう。

力んで弾くと、指が思うように動かず失敗の原因になったり
正しい音を弾いていても汚い響きになったり
体に痛みがでたりと、いいことはひとつもありません。

これは、ふだんの練習のなかで
かなりしっかり問題意識をもって取り組んでいただかないと
なかなか改善されません。

まずは力まなくても弾ける簡単な箇所から少しずつ
無駄な力を抜いて楽に弾くように心がけてください。

力んで弾いていることを自覚できていない場合もあるので、
レッスンのときに重点的に注意するようにしますね。